FEATURE~美文字への道 vol.5 ~ 『誰も気にしない細かい部分に気を付ける。一気に美文字を実感します。』

2018/09/20

「横画は右上がりにする」「平行」「等間隔」「払い、はね、止め」。

これまで「気を付けるだけで美文字に近づける」、そんな本当に基本的なポイントについてお伝えしてきました。そして今回からはもう少し踏み込んで、私自身が日々文字を書くときに気を付けている細かいポイントについてもお話していこうと思います。

よくこの細かいポイントについて生徒さんにお話しすると、「いつもそんな細かいことにまで気を付けて書いているんですか?」とか、「文字を書くのにそんなこと思った事ない!」と驚かれることが多いです。

しかしそれは裏返せば、多くの人が気にしていないポイントということ。やはり、そこまで気を付けられるかどうかで文字の印象は大きく変わってくるのだと思います。ぜひ最後まで読んで実践していただけると嬉しいです。

前回までのコラムでもお伝えした通り、文字は縦・横・斜めといった単純な点と線でできています。私が、そんな単純なものからできている文字を書く上で気を付けていること。それは「線に変化をつけて書く」ということなのです。

ふだん何気なく文字を書いている方には、なかなかピンとこない表現かもしれません。

ではもう少したとえを変えてみましょう。

皆さんの中にもファッションが好きな方は多いのではないでしょうか?同じ服でも、組み合わせによって全く違った印象になったり、同じ組み合わせの服でもアクセサリーやベルトを変えるだけでまたグッと素敵になったり。アイテムの組み合わせで印象がいかようにも変わるコーディネートは非常に奥深く、面白いものですよね。

文字も分解すれば、部品の組み合わせです。その部品をどう組み合わせるか。そして部品の中でどんなアクセントをつけて書くか。
そんな意味で、私自身、この2つは少し似ているなと思っているのです。

では、私自身が実際どのようなことに気を付けて書いているか。それぞれの場合についてみていきましょう。
例えば、横画が3本並ぶ漢字というのは意外に多いものです。例を挙げるとするなら、「三」「春」「素」「洋」などでしょうか。
この3本の線を書くとき、皆さんはどう書いているでしょうか?
文字を書くのが苦手という方や上手に書けないという方は、特に意識することなく何気なく3本横に引いて書いていらっしゃる方が多いように感じます。
しかし、私はまず3本の線の「長さ」に変化をつけるように気を付けています。
2本目が一番「短く」、3本目が「長い」線になるように意識して書いているのです。
上から順に、基準線、それより短い線、最後が一番長くといったように。それだけでも3本の線が並んだ時には、ちゃんと変化とメリハリが出てきます。

そして、「長さ」だけでなく「書き方」にも変化をつけて書くとよりメリハリが出てきます。

以前お話したように横画は少し右上がりに書きます。しかし3本目の一番長い線は、ただ右上がりにするのではなく、少しだけそり上がる形に書くように気をつけます。

長い線はただまっすぐ右上がりに書いてしまうと傾きが強く見えてしまうので、少しそり上がるようにする(=アーチ型にする)ことで安定して見え、見た人は「美文字」と感じます。

3本の線をただ何気なく、同じような線で書くのは、全身一色のポイントが何もないコーディネートと似ています。3本の線の中で長さに変化をつけて書くことや、書き方を変えること。それは、アクセント小物を足すことや少しデザイン性を変えることと同じように思うのです。

ではもう一つ。四角形を書く漢字に注目してみましょう。

「口」「田」「日」「目」といったように、四角形は比較的簡単な字にも多くみられます。
これらの漢字が綺麗に書けない!という生徒さんの字のほとんどが「子供っぽくみえる」「図形っぽくみえて」しまっているということです。「子供っぽく」「図形っぽく」みえてしまう原因は、本当に真四角に書いてしまっている場合が多いように思います。

特に「口」や「田」は正方形ではないことに注意しましょう。少し横広の四角形で書いてあげる。そして、縦画は真下におろすのではなく少し内側にすぼめるように書いてあげる。それだけで変化が出て、「子供っぽく」「図形っぽく」には見えなくなります。

そしてそこまで気をつけることができるようになったなら、「四角形の閉じ方」にも気を付けてあげられるとさらに美文字に近づくと思います。

皆さんは、最後どうやって四角形を閉じていますか?端から端まできっちり閉じてしまっていませんか?美しい文字を書く方は、この最後の最後まで意識して書いていらっしゃいます。

上に挙げた例では、「口」の最終画は少しだけ長めに引いて横画が出るようにします。
また、「田」「日」「目」では縦画2本が少し長めに出るように、最終画を少し上目に引いておさめるとそこがアクセントになって、品のある大人っぽい字に変わりますよ!
本当に細かいところですが、ここに気をつけられるかそうでないかで文字の印象は大きく変わってくるように思います。少しでも皆様の字が美文字に変わりますように。
次回も引き続き、私が気を付けているポイントについてお話していきます。お楽しみに!
(斉藤美苑 東洋書道芸術学会師範 東洋書道芸術学会評議員)

新・実用ボールペン字講座

分かりやすさ抜群の動画で、一日たったの15分。美文字を目指そう!

          • Facebook
          • Instagram