FEATURE~美文字への道 vol.8最終回~ 『文字は文章にして、はじめて何かを伝えられる』

2018/11/20

皆様、こんにちは。斉藤美苑です。このコラムも今回でVol.8。いよいよ最終回となりました。

今まで、1つ1つの文字がどうやったら美しく書けるかに焦点を当ててお話してきました。しかし実生活においては、文字1つを書いただけで相手に自分の言いたいことが伝わるかといえば、

もちろんそうではありませんよね。

やはり文字をいくつかつなげて、単語や文章にして初めて、相手に自分の言いたいことがきちんと伝わるのです。
 今回はそんな、「文章にした時こそどう美しくみせるか」についてお話していきたいと思います。

文章にした時に美しく見せる、一番重要なポイント。それはまず「文字同士の中心をきちんと合わせる」ということだと思います。

1つ1つの文字がどんなに美しく書かれていても、文字同士の中心が揃っておらず、文章全体としてみたときにガタガタ波を打つように書かれていては、全く美しく見えません。

むしろ逆を返せば、1つ1つの文字はそんなに上手でなかったとしても、文章全体の中心がまっすぐ揃って書かれていればそれだけでも美しく見えるということです。

縦書きでも横書きでも、まずは文字同士の中心をとらえて、それらを揃えるように気を付けて書いてみましょう。

今まで文字の中心を合わせることに意識を向けて文章を書いてこなかった方は、これだけでも大分綺麗に書けるようになると思いますが、

更に文章を美しくみせるためには文字の大きさにも注意を払う必要があります。

ある文字だけが極端に大きくなりすぎていたり、ある文字だけが極端に小さくなりすぎていたり。これではどんなに文字の中心を合わせて書いていても、文字自体がガタガタ波を打ってしまい、美しく見えません。

そして日本語の文字には「漢字」「ひらがな」「カタカナ」の3種類があります。

私達日本人は、この3種類の文字を組み合わせて文章を書いていくわけですが、皆さんはこの3種類の文字の「大きさに変化をつけて書く」ところにまで意識を向けて書いているでしょうか?

 文章を美しくみせるためには、実はこの3種類の文字の大きさを微妙に変えて書かなければならないのです。
 
 文字の黄金比とでもいうのでしょうか。

一般的に、漢字を10としたときにカタカナ8、ひらがな7の割合で書いてあげると美しく見えるといわれています。これは縦書きであっても横書きであっても同じです。

漢字はその字自体で意味をもっているので、目立つように大きく。カタカナは固有名詞を表す場合があるので、やや大きく。

そしてひらがなは漢字を目立たせる意味合いや、固有名詞に使われる頻度も少ないため小さく書くことで、

「読む人に正確に早く情報を伝えることが出来る(=美しくみえる)」というのがこの黄金比の理由だそう。

これは今まで私も知らなかったので、調べていてとても勉強になりました。この理由まで知っていると、「漢字10:カタカナ8:ひらがな7」も記憶に残りやすいかもしれませんね。

 そして最後に、私自身は文章を美しくみせるために上の2つの注意点と併せて、「文字間(もじかん)」をとても大事にしています。

文字間とは、文字と文字の間の隙間の事です。

この文字間。細かいことではありますが、文章を美しくみせる上でとても重要で、文章のどこかですごく詰まっていたり、

一方でどこかがものすごく広がっていたりすると読むスピードが惑わされてしまって読みにくくなる=美しくみえなくなってしまうのです。

細かいことですが、文章の中で文字間が一定になるように気を付けて書いてあげると、とても美しくみえます。

「中心線を合わせること」や「文字の大きさのこと」まで気を付けられるようになったら、ぜひ「文字間」まで気を付けて文章を書いてみてくださいね。

ここまでコラムを書いてきて思うのは、
読む相手のことを思って書くと文字も文章も、必然的に美しくなるのではないかということです。

読む相手に読みやすくわかりやすく伝えるために、漢字、ひらがな、カタカナの大きさを変化させて書くようになったこと。文字間を整えること。それ自体が文章を美しくみせることにそのままつながっているのだと私自身改めて気づかされました。

全8回という短い間でしたが、お付き合いくださいました皆様、本当にありがとうございます。このコラムが、皆様の文字に対する意識を変えるのに少しでもお役立ていただけたのであれば、とてもうれしく思います。

SNSやメールが一般的になった現代、少しでも手書きの良さが広まりますように。

(斉藤美苑 東洋書道芸術学会師範 東洋書道芸術学会評議員)

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